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へぎ板と和菓子

へぎ板とは聞き慣れない言葉ですが、漢字で書くと「片木板」となります。「片木板(へぎ板)」の由来は、檜や杉を薄くはいだ木片「剥木」から由来しているようです。昔は今のように皿などがなかったため、和菓子をのせていたのが「片木板(へぎ板)」でした。杉の柾目を使う事が殆どだったと言います。大きさは好みによって様々でしたが、隅切(すみきり)と言って右上角または左上角を落していました。その理由は定かではありませんが、上下がわかるようにではないかと推測されています。身近にある杉で作り、柾目がお菓子を引き立て、微かな杉の香りでもてなしていたと考えられています。現在でも茶の湯などで使われており、「片木板(へぎ板)」の上に和菓子をのせて、黒文字を添えています。また、和菓子屋さんのディスプレイにも時々見かけます。近頃は赤杉の「片木板(へぎ板)」で作った銘々皿などは余り見かけなくなりました。年々職人が減ってきていると言います。「片木板(へぎ板)」の皿を使う際は、濡らして使うことが大切です。乾いた状態で和菓子を置くと、シミになったりと痛んでしまうからです。また、濡らすと餅菓子などがくっつかない利点があります。さらに夏場であれば、濡らすことで清涼感も感じられるでしょう。

和菓子をのせるへぎ板の作り方

「片木板(へぎ板)」は、天然木を使います。木を薄く「片木板(へぎ板)」にできるような木は限られているそうです。数百年のもので、目がつまった木が「片木板(へぎ板)」に適しています。「片木板(へぎ板)」に適した木を、柾目に沿って繊維を壊さないように慎重に手で割っていく作業になるようです。削ったりはせずに、1ミリ程に薄くなるまで手で剥いでいきます。「片木板(へぎ板)」を作るには、熟練と職人技が必要になることは言うまでもありません。手間暇かかる作業を経て完成した「片木板(へぎ板)」は柾目の模様が美しく、使い込むほどに艶も出てくるということです。柾目以外に板目の「片木板(へぎ板)」があります。「片木板(へぎ板)」は和菓子をのせるだけではなく、茶道具や茶室の天井装飾などにも使われます。「片木板(へぎ板)」を編んだものを「網代」と言い、年月の経過で独特の味が出て来ます。

「嘉祥の儀」でもへぎ板に和菓子をのせた

現在の6月16日の「和菓子の日」の前進とも言える「嘉祥の儀(かじょうのぎ)」でも、「片木板(へぎ板)」が使われていました。徳川幕府は「嘉祥の儀」に大名たちを招いて、大広間で和菓子を振る舞ったと言います。これを嘉祥頂戴と言っていました。和菓子は白木の「片木板(へぎ板)」の上に、青杉の葉を敷いて積んであったそうです。1人1個ずつ取らせたとのことです。各将軍に関する事象を日ごとに記録している、総称「徳川実記」により、和菓子の数が記録されています。饅頭588個、あこや2496個、金団3120個、より水6240個、平賦70個、羊羹970切れ、鶉焼き140個、熨斗4700筋、総数2万324個。500畳の大広間に並べられたそうです。その際の記録には、折敷に杉の葉を敷いてその上に置かれたと記されていました。「片木板(へぎ板)」の上に和菓子を並べたと推測されます。しかし、こんなの多くの和菓子が並べられたら、それは圧巻だったことでしょう。