「すあま」という和菓子があります。
関東では、よく知られていますが、関西では見かけることの少ない和菓子です。
今回は、そんな「すあま」の歴史と種類、さらには、「すはま」や、その他まぎらわしい和菓子との区別について、まとめてお伝えいたします。
目次
「すあま」の歴史
「すあま」は、素甘または寿甘とも書きます。
主に色は、薄いピンク色で、白との二重構造になっていることも多いです。
弔辞用には、黄色や緑のすあまが作られることもありますが、基本的には祝儀用です。
歴史については、残念ながら、江戸時代の主要な料理書には出てこず、詳しい資料がありません。
けれども、江戸の木場で生まれたという説があります。
ただ、関西では、ほとんど知られていない和菓子です。
関東では、祝儀の引菓子としても利用されていました。
出産や、七五三、子どもの入学のお祝いや成人式などに配られることが多いのです。特に埼玉県では、その風習がさかんです。
すあまは、現在でも、その独特の食感と味わいが愛されている和菓子です。
求肥よりは、はるかに噛み応えがあり、柔らかい、のし餅に砂糖をまぶして食べているのに似た、独特の噛み応えがあります。
それでいて、硬くならず、日持ちがします。
現在では、日常の少し気張ったお菓子よりも、親しみやすい位置づけなのではないでしょうか。
ただし、地域によっては、上等の素材を使って、高級菓子にすることろが残っています。
羊羹よりは軽く、少しモチモチした和菓子が食べたいときに口にするような、すあま。
関西における、ういろうとよく似た扱いかもしれません。
ういろうとは、外観もよく似ていますから、その違いについては、後述いたします。
すあまの製法と種類について
製法
・上新粉(うるち米で作った米粉)を湯で練って、蒸し、砂糖を加えます。
上新粉:砂糖=1:1が多い。
・熱いうちに、餅のようにつき上げて、成形します。
種類
1)伊達巻を上からつぶしたような形。巻きすで形を整えるもの。
外側を食紅で染めたピンクにし、内側は白くすることもあります。
2)「つるのこ餅」と呼ばれる、つるがうずくまったような柔らかい楕円形のもち。
外はピンクで、中が白い場合や、ピンクの中に白あんを入れる場合もあります。
すあまのレシピ
材料 12切分 (北海道ガスのホームページ参照)
・上新粉…150g ・砂糖…150g ・食紅・砂糖…少々
・熱湯…150~180ml ・片栗粉…少量
1)上新粉に少量の塩を入れ、熱湯を少しずつ入れて練ります。
手早く良く練ることが、滑らかに作るコツです。
2) 蒸し器に入れて、20分ほど蒸します。
3) 2~3回に分け、砂糖を加えてよく練ります。2回目に食紅を加えます。
一度に砂糖を入れると、水分が分離することがあります。
4) 形を整えて、もう5分蒸し、片栗粉に取って、すのこで巻き、形を整えます。
まぎらわしい和菓子との違い
・「求肥」は、うるち米で作った上新粉ではなく、もち米から作る、白玉粉または餅粉で作ります。また、砂糖だけでなく、水飴も加えることが多く、水分の含有量が多いです。餅粉:砂糖:水飴=1:2:1が多い。
・「ういろう」と「すあま」の違いは、ういろうの最後に型に入れて蒸す製法です。
すあまは、蒸すときは型に入れません。
・「州浜(すはま)」との違いは、材料と見た目と形が決定的に違っている点です。
一目見れば、まったく別の和菓子です。
材料は、大豆と青豆を煎ってひいて作る州浜粉です。
州浜粉に砂糖と水飴を加えて練ったものが州浜になります。
豆飴とも呼ばれます。
形は、独特の州浜という形であったり、丸めてあったりします。
丸めて団子のように、串にさす場合もあります。
製法は、鎌倉時代の京都の菓子店、「松寿庵」が考案しました。
江戸前期の1657年(明暦3年)創業の、植村義次が2016年に閉店するまで、一子相伝(いっしそうでん)の老舗でした。
しかし、今でも、他の和菓子店で州浜は作り続けられています。
さて、このように、「すあま」と名前のまぎらわしい「すはま」をはじめ、「ういろう」や「求肥」との違いも説明してまいりました。
日本全国が、コンビニの進出などにより、均一化された食文化になりつつあります。
しかし、地方地方の食文化は大切な文化遺産です。
関東で長く愛されてきた、すあまの良さも、ながく守り続けられますように。
地方の特色あるお菓子も、作りまた、食べてまいりましょう。