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和菓子の「へら」

「へら」と言うと頭に浮かぶのは、かき混ぜたりする時に使う調理道具を思い出しますね。和菓子でも、小豆を混ぜたり、餡を練ったり、求肥を作る時など、様々な場面に「へら」が登場します。そのような時に使われるのは、一般的に使用している薄型の扁平な板状の「へら」を使います。「へら」の材質もゴムやステン、木製と様々な種類があります。洋菓子などではゴム製がよく使われていますね。和菓子では、木製の物を使用することが多いようです。実は和菓子には、通常の「へら」の他にも「へら」と呼ばれる道具があります。練り切りなどの上生菓子を作る際に、造形に使う道具を「へら」と呼んでいます。和菓子の「へら」に定義はありません。模様になる筋を入れられる物は、全て「へら」になってしまいます。和菓子の世界で、造形に使う「へら」で有名なのが三角べらです。木製の三角柱のような形をした棒で、角が細い線、太い線、二重線が付けられるようになっています。先端は花の芯が象られるように工夫されています。

和菓子職人の始まりは「へら」

新人の和菓子職人が最初に挑戦するのが「へら菊」です。「へら菊」というのは造形の技法になり、菓子職人の基本でもあります。和菓子の技能試験の課題になるのも「へら菊」が多いようです。丸めた練り切りに、三角べらを使って花びらを描いていきます。見ていると簡単なようですが、バランス良く筋を入れるのが難しく、何度も練習を重ねる必要があります。初めて三角べらを手にした職人は、繰り返し「へら菊」の練習をするといいます。ベテラン和菓子職人になると、「へら」を自分の手にしっくり馴染むように、手作りするそうです。幾つもの色々な形の「へら」を自分の宝として、使いこなしていきます。あの美しい和菓子が作れるのも、熟練した職人技が必要ということになりますね。

「へら」が作り出す和菓子の芸術

市販の「へら」以外に、自分だけのオリジナルの「へら」があるのが和菓子職人です。特注で制作してもらう他、身近なスプーンなどを使った「さじ切り」、竹や細い木を束ねて作製された「ささら」なども使われます。自分で自ら作る「へら」もあるそうです。和菓子職人がイメージした和菓子を作るために、ピッタリの道具「へら」を見付けるのも職人の技術かもしれません。また、「細工バサミ」を使って作る「ハサミ菊」は正に職人技で、練り切りの最高峰ではないでしょうか。和菓子で使われる「細工バサミ」は、裁縫に使う糸切りバサミのようなもので、先端が鋭く少し反っています。「ハサミ菊」は1枚1枚花びらをハサミで切っていく、根気の作業です。洋菓子の様にパーツを組み立てていくのではなく、球体のものから立体に浮き出して行くのが大きな違いです。ハサミ1つで見事な菊の花が出来上がり、これぞ日本の伝統という美しい和菓子が完成します。海外の人からも、「クールビューティー」「クールジャパン」などと言われ、日本の和菓子は芸術品と非常に高い評価を得ています。近頃は、海外の旅行者向けの和菓子教室なども開催されているようです。日本の和菓子は海外にも誇れる文化です。そのような洗練された美しい和菓子を作るには、「細工バサミ」も「へら」も、和菓子作りには無くてはならない道具のようです。