和菓子で呼ぶ「へぎ」とは

「へぎ」とは、そのまま意味を表現すると、剥ぐと言うことです。ですから、和菓子の世界以外にも、「へぎ」と言う言葉は多方面で使われています。例えば和食では、薄くすき取る包丁のことを「へぎ切り」と言います。ユズなどは「へぎ切り」をする代表的な包丁さばきになります。造園業でも、竹を薄く剥いでいく作業を「竹へぎ」と言い、出来上がった薄い竹で枝折戸などが作られます。では、和菓子で呼ぶ「へぎ」はと言うと、和菓子をのせる皿のような役目になります。銘々皿のように四角に切ったものや、和菓子の持ち運びに敷いたり、包装に使っている場合もあります。京都の老舗和菓子店『大黒屋鎌餅本舗』の有名な和菓子に「鎌餅」があります。「鎌餅」は餡を包んだ餅菓子になりますが、1つ1つが「へぎ」に包まれています。和菓子で使う「へぎ」は、杉などの天然木を手作業で薄く剥いで、1ミリ程にしたものです。ほんのり木の香りがすることと、保湿性があることが利点です。「へぎ」を使用する時には濡らして使います。濡らすことで和菓子を乾燥から守るからです。また、木であるためビニールなどと違い通気性が良く、和菓子を長持ちさせます。現代のような保冷剤などが無かった時代は、知恵と工夫で和菓子を長持ちさせていたのですね。

和菓子のへぎ餅

和菓子の種類に「へぎ餅」というものがあります。餅を薄く切って乾燥させ、油でカリッと揚げた素朴な和菓子です。あげ餅の和菓子は全国各地にありますが、そのまま「へぎ餅」というネーミングなのが、徳島県つるぎ町にある和菓子店『ふじや』の「揚げおへぎ」です。小豆、あみえび、青のり、黒豆が入った餅を揚げています。元々へぎ餅は、昔からの簡単なおやつでした。お正月などに余ったお餅を、薄く切って乾燥させ網で焼いて食べていました。「へぎ餅」は炙って食べても、油で揚げても美味しく頂けます。餅をつく時に豆類や、海苔や小海老などの磯物をいれても風味豊かに出来上がります。ちょっとしたおやつに、作ってみるのもいかがでしょうか。

和菓子の仕切りと「へぎ蕎麦」など

和菓子の仕切りに「へぎ」を使っている和菓子店があります。岡山県倉敷市にある『今和夢菓子錦盛堂』です。岡山は桃太郎で有名な地ですが、和菓子も勿論きびだんごになります。菓子名は「昔ながらのきびだんご」。1つ1つの餅の仕切りに「へぎ」を使っているので、ほんのり木の香りがする優しいきびだんごです。一方、新潟県魚沼地方発祥の「へぎ蕎麦」もあります。「へぎ蕎麦」はつなぎに海藻の布海苔(ふのり)を使った蕎麦で、「へぎ」で作られた器に盛り付けられている事から、「へぎ蕎麦」と言われています。蕎麦は手繰りされてキレイに「へぎ」に盛られているのが特徴です。手繰りとは、ひと口程度に丸めて盛ることを言い、布海苔をつなぎに使っているため、蕎麦のコシが強いため出来るそうです。また、結納の品々をのせている四角い器のような物も、「へぎ」になります。酒蔵や味噌蔵でも、麹を作る際に大きな「へぎ」の容器で合わせます。こうしてみると、和菓子以外にも「へぎ」は様々な場面で使われていることがわかりますね。