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和菓子店『鈴懸(すずかけ)』の歴史

福岡博多に本店を構える和菓子の老舗『鈴懸(すずかけ)』は、大正12年の創業以来90余年を数えます。国が昭和42年から開始した、卓越した技能者が表彰される「現代の名工」を創業者の中岡三郎氏が受賞しています。その中岡三郎氏の教えを現在も受け継ぎつつ、新しい試しみにも挑戦しているのが『鈴懸(すずかけ)』です。現在は3代目の中岡公生氏が社長を務めています。「和菓子屋として美味しい物を作る」「お客様に美味しい物を提供する」という精神は、初代から変わらずに実行されていることです。手作りに拘った『鈴懸(すずかけ)』の和菓子がそこにあります。本店の他に福岡に4店舗、東京と名古屋に各1店舗があります。東京は2002年から新宿の伊勢丹デパートに入っています。本店は博多座の向い側に店舗があります。厳選した素材を使い、生菓子を中心に1品1品丁寧に作り、直接販売が特徴です。但し、日持ちのする和菓子については、インターネットでの販売もしています。

『鈴懸(すずかけ)』の和菓子の拘り

出来立ての美味しさや、昔ながらの添加物を使わない自然の和菓子が、『鈴懸(すずかけ)』の和菓子です。安心、安全に拘り、朝つきの和菓子をお客様に食べてもらいたい。ただそれだけの思いが現在に繋がっています。冷凍なども一切せずに、その日に作ったものをその日に提供するという拘りのスタイルです。昔は小さな和菓子店がしていたことと、全く一緒かもしれません。いわば時代に逆行したような、温故知新の考えがあります。今の時代には非効率ともいえる商売のやり方ですが、菓子職人の技術があってこそ成り立つものです。美味しい物をお客様に提供しようという気持ちが、菓子職人のレベルを更にアップさせているようです。材料についても現地に出向き、厳選したものを選んでいます。

3代目の目指した和菓子と『鈴懸(すずかけ)』

『鈴懸(すずかけ)』の店舗拡大の切っ掛けを作ったのは、3代目の中岡公生氏でした。子供の頃、学校へ行く前に工場でつまんだ、出来立て和菓子をお客様にも提供できないだろうか、と考えました。一番美味しい状態の和菓子をお客様に食べてもらいたい、そんな思いから中岡公生氏は本店とは別に『鈴(りん)』という名前で和菓子店を始めました。これが現在の和菓子店『鈴懸(すずかけ)』のスタートでした。置いている和菓子は8種だけです。奇をてらうこともしませんでした。子供の頃食べていたような、出来立てに拘ったシンプルな和菓子をお客様に提供しました。「添加物が入っていないので日持ちがしません」「お餅は固くなります」「お餅が固くなったら焼いて食べると、また美味しいですよ」と丁寧な説明をしながら販売したと言います。中には、昔を懐かしんでくれる声もありました。当時はお土産屋が多く見られた時代で、和菓子屋の本来の意味とは何だろうと考えたそうです。それが朝つきの和菓子に繋がっていった理由です。和菓子屋として当たり前のことを当たり前にしたそうです。そんな気持ちで、誠心誠意心を込めて和菓子を作ったといいます。店舗には職人を置いて、成型加工しているところをガラス越しに見せました。商品が不足すると作るというスタイルで、現代では余りありません。