鹿の子(かのこ)という和菓子は、求肥(ぎゅうひ)をこし餡で包みんだそのまわりに小豆をつけた和菓子です。小豆の豆ならではの食感と中の餡子と求肥のもちもちした食感が豆好きやお饅頭好きにはたまらなく、蜜漬けした小豆は中の求肥の甘さにぴったりマッチしてお茶請けにも相性のいい和菓子です。
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鹿の子の季節とバリエーション
鹿の子(かのこ)とは、読んで字のごとく鹿の子供のことです。鹿は秋に繁殖期を迎えることから、大人の鹿の季語は秋です。百人一首に「奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき(猿丸太夫)」という歌がありますが、これは「奥山に一面に敷き詰められた紅葉の葉を踏み分けながら恋の相手を求めて鳴く鹿の声がなんとも悲しげで秋の哀愁を感じる」という意味です。このように恋の季節を迎えた秋の鹿が春に赤ちゃんを産んで、その赤ちゃんが夏には子どもに成長することから、鹿の子どもは夏の季語とされています。
鹿の子どもは背中に白い斑点があり、鹿の子斑(かのこまだら)という日本古来の伝統的な模様が存在するほどで、鹿の子絞り(かのこしぼり)と呼ばれる染めの手法で着物や風呂敷などにも使われます。和菓子の鹿の子もこの鹿の子どもの背中の白い斑点の模様に似ているとして名づけられたもので、江戸時代に嵐音八(あらしおとはち)という歌舞伎役者の実家である日本橋人形町の和菓子屋さんから売り出されたことがはじまりとされています。
鹿の子の中心は、白玉粉やもち粉に水と砂糖を加えて練りあげた求肥が使われることが多く、求肥のもちもちした食感から鹿の子餅とも呼ばれることもあります。求肥の周りは小豆のこし餡を使われることが多いですがつぶ餡を使っているお店もあり、栗鹿の子には白餡を使われることもあります。こし餡のまわりは蜜漬けした大納言小豆をつけるものが一般的で、黒豆や栗やうぐいす豆をつけたものもあります。そして最後に寒天をつけることでツヤツヤとした透明感を出します。
また、栗鹿の子のように栗をつかったものは栗の季節に合わせて秋の和菓子として扱われていることが多く、うぐいす豆をまわりにつけたものは春の和菓子として扱われることもあります。また、鹿の子どもの背中の白い斑点の模様をした羊羹を鹿の子と呼んでいるお店もあり、鹿の子のバリエーションはとても豊かです。
鹿の子専門の和菓子店「銀座 鹿乃子」
鹿の子を専門にした和菓子屋さんが銀座にあります。鹿の子にこだわったこのお店では、厳選された高品質の国内産素材の豆などを使った鹿の子が人気のお店です。お店の1階は売店で、2階は喫茶店になっており、そこでは一般的な鹿の子だけでなく、大福やあんみつに鹿の子を入れていただくものもあります。
「銀座 鹿乃子」というお店の名は、この和菓子の鹿の子からつけられたものではなく、創始者が茨城県鹿嶋の和紙問屋を営む家の子どもであったことから、鹿嶋の子、鹿乃子となりました。後に屋号と同じ響きの和菓子の鹿の子を銀座銘菓にしようと昭和35年に花かのこという商品が産まれたことが鹿の子専門のお店として有名になったはじまりです。銀座のお店は平成2年に開業され、銀座のお店は比較的新しい店舗となります。
花かのこは鹿の子模様の箱に入っている商品で、餡もこし餡だけでなく小豆や栗など6種類のまわりの素材が引き立つような餡が使用されています。和菓子職人がひとつひとつ丁寧に作り上げた花かのこは人の温かさを感じることのできる昔ながらの和菓子に仕上がっています。
まとめ
鹿の子はバリエーションが豊富なので、色々な鹿の子を食べてみたくなります。ぜひ鹿の子という名前の由来を思い浮かべながら、食べ比べなどして楽しみんでみてはいかがでしょうか。季節や自然を感じとる日本人の和の心がそこに見つかることでしょう。