12月

年末から年始にかけてのモチーフには、楽しいものが多いですね。

餡を練りきり生地で作った色づいた葉で巻き、表面に白い新引粉や、氷餅を散らして、下の降りたさまを表します。
新引粉とは、道明寺粉を細かく引き割っていったものです。
荒粉、みじん粉とも呼びます。
氷餅とは、餅米を水引きして、できた汁を煮て、枠に流して凍らせた後、乾燥させ砕いたものことです。
新引粉も、氷餅も、霜や雪や氷を表すのに使います。

水仙

12月下旬から2月にかけて。
木型や手技で、白い花と黄色の芯のデザイン。

柚子(ゆず)

柚子の季語は、秋ですが、生菓子としては、冬至(12月20日ごろ)のあたり限定で、作られることが多いです。
薯蕷饅頭の皮を黄色く染めて、箸で凸凹を出して、蒸しあげたものが代表的です。

うさぎ

野うさぎは、かつて日本の農村の貴重なたんぱく源でした。
獣の肉食を嫌ったために、鶏であるとごまかして、1羽2羽と数えることにして、食べていたのです。
昭和の初めまでは、旧制中学の学校行事にウサギ狩りがあるほど、親しみの深い動物でした。
季語は冬です。
お菓子としては、菓子の木型や焼き印に使われています。
また、雪ウサギのように、まんじゅうを卵型に作って、焼き印で耳を、箸で赤い目をつけたものもあります。
種せんべい(最中皮や、麩の焼せんべいのこと)を丸く作り、焼き印でウサギにするもの。
昔の木型のデザインで、琵琶湖の波間を走るウサギの意匠があります。
自休という禅僧が、竹生島(ちくぶじま)に参った時に作った漢詩、「緑樹影に沈んで魚木に上がり、清波に月落ちて、兎波間を走る」からとられたそうです。
工芸品にもよくとられたデザインです。
また、子どもが好むので、七五三や入園祝いの和菓子にウサギのデザインを使うことも多いのです。

千鳥

千鳥は、冬の意匠です。
そのまるっこいデザインを、ひよこと勘違いする若者もいるそうです。
菓子銘としては、「磯千鳥」「浜千鳥」「波千鳥」「友千鳥」などがあります。
千鳥の形のお干菓子や、小豆の粒を千鳥に見立てた道明寺粉の蒸し羊羹などがあります。

干菓子の木型に、羽を広げたつるの形は多い。
また、せんべいやまんじゅうなどの場合は、箸で目やくちばしの焼き印を押し、頭部に赤い点をつけた、タンチョウヅルの形に作ることが多い。
小見出し:雪
淡雪羹は、卵白を泡立てて、寒天液と砂糖を混ぜ、型に入れて竿物菓子に仕立てたもの。
淡雪羹の駅を、鹿の子などの上からかけると、雪を表します。
日本三大銘菓の一つ、新潟県の「越乃雪」は、和三盆糖ともち米の寒さらし粉で、落雁に仕立てたもの。
雪のように口の中でとけるのが楽しいです。

1月

松竹梅の意匠

松は、不老長寿の象徴。干菓子で、本物そっくりに作ったもの。
緑の羊羹やきんとんなど。日の出や雪を組み合わせた意匠も多いです。
また、松風というお菓子は、小麦粉を焼いて、けしの実やごまを散らしたものを差します。各地にさまざまな味付けのものがあります。
竹は、三枚笹、五枚笹、切り竹の落雁や有平糖。
練りきり生地の笹葉。竹の輪。雪の意匠の落雁に雲平の笹を合わせた雪持ち笹。
松竹梅として、セットとしたデザイン。
松竹梅の間には、本来、上下はありませんでした。食べ物屋の松竹梅は松が一番効果になっていますが、それは後付けの格付けです。
本来は、松が不老長寿、竹がまっすぐな心根、梅が香りと品の良さを買われた組み合わせだったのです。
昔は、結婚式の引菓子として、松の絵を描いた大ぶりの羊羹と、笹と梅の生菓子の三点セットを三ツ盛りと呼んで、必ず使っていました。どのお菓子も、普段の3倍くらいの大きさで、おめでたさを強調していましたが、最近はバウムクーヘンなどにとって代わられています。

南天

音が、難を転ずるから、めでたい植物として、正月の意匠に使われています。
練りきり生地で緑の葉を折った形をつくり、上に赤い実を2粒のせて、南天を表します。
しかし、同じデザインが、藪柑子(やぶこうじ)や、千両万両と呼ばれることもあります。

海老(えび)

腰が曲がるまで長寿で、勢いよく跳ねる出世の象徴として、お正月の縁起物です。
ただし、海老でタイを釣るという風に、魚のタイより格下に見られていたために、お菓子の木型としては、タイのほうが多いのです。
和歌山の総本家駿河屋の「老いの寿」という木型が有名です。

なす(茄子)

初夢の一富士二鷹三茄子(いちふじにたかさんなすび)に合わせたお正月のお菓子。
白あんを、ういろう生地で包み、白と紫のナスに形どったもの。
秋ナスを砂糖漬けにしたもの等がある。
小見出し:若菜
宮中では、一月の初子の日や、白馬の節会(あおうまのせちえ)に、野に出て若菜をつむ習慣がありました。
邪気をはらって、不老長寿を祈るためです。
これが、現在の七草がゆの行事につながっていると考えられます。
お菓子としては、江戸時代からの若菜餅があります。
求肥であんをくるみ、青大豆の粉をまぶしたものや、緑のそぼろのきんとんなどがあります。

茶道の新年最初のおけいこのお茶会・お初釜

表千家…常盤饅頭(ときわまんじゅう)餡が、白あんを緑の松の色にそめた薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)。松の意匠。
裏千家…花びら餅。宮中や公家の正月のお茶会に使う、菱葩(ひしはなびら)を、明治に入って、裏千家の十一代玄々斎が、宮中からゆるされて、初釜に使うようになったもの。薄くて白く丸い求肥餅と、薄くて薄紅色のひし形の求肥餅を重ねて、中に白味噌あんを入れ、真ん中に押し鮎をかたどったゴボウの砂糖煮をはさんで、半分に折ったもの。
武者小路千家…都の春。丸めたこしあんを、練りきり生地で、反物のように包んだ形。表面に、梅の押し型をしてあることが多い。

2月

寒紅梅は1月から使う意匠です。
椿も、12月から使うこともあります。

紅梅・寒紅梅(かんこうばい)

紅梅をかたどる練りきりの生地に、荒粉の雪を降らせたもの。
紅梅をモチーフにした菓銘としては、「霜紅梅」「雪紅梅」「寒紅梅」などがあります。
日本では中国の伝統にのっとって、花といえば梅でした。
それが変わったのは、平安時代に国風文化が栄えてからのことです。

椿(つばき)

1月から2月にかけてのデザイン。「玉椿」「姫椿」「白玉椿」「花椿」
餡を包んだ求肥の生地をへこませて、椿の黄色の芯をきんとんやそぼろを置いたもの。羊羹で緑の葉を添えることも。
奈良のお水取りの期間に、奈良の和菓子屋が作る、紅白の造花の椿をかたどった意匠。菓銘は、「御堂椿」「糊こぼし」「南無観椿」「修二会の椿」「二月堂椿」「開山椿」「参篭椿」「開山良弁椿」「良弁椿(ろうべんつばき)」など。
また、平安時代からある日本独自の菓子として、椿餅があります。
青々した椿の二枚の葉で、道明寺粉の餅をはさんだもの。最初は、甘蔦(あまづら)をかけて食べたが、甘い小豆餡が普及すると、道明寺粉の餅でくるんだものもできてきました。