和菓子で使う抜き型とは

日本の伝統文化とも言えるのが和菓子です。美しい和菓子の造形を支えているのが、抜き型です。日本料理や和菓子の世界では古くから抜き型が使われてきました。抜き型というと、洋菓子などで使うステン製の物をイメージしますが、和菓子で使うものを特に、菓子木型と言います。ステン製の抜き型を使い、造形していく場合もあります。菓子木型は江戸が発祥と言われており、200年以上の歴史を持つ伝統工芸です。しかし、残念ながら菓子木型の職人が年々減少している現状があります。和菓子に使う木型は、主に山桜から作られています。堅い強度のある木でなければ、菓子を作る際の力仕事に耐えられないからです。また、堅い木だと摩耗が少ないという理由があります。抜き型に使われる木は、採取してから2年間は乾燥させ、その後3年間寝かせてからやっと使用できるそうです。菓子木型職人が減った現在、木型は非常に貴重なものになっています。

美しい和菓子が生まれる抜き型

菓子木型は数種類の彫刻刀とノミを使って、丁寧に彫られていきます。左右が逆、しかも凹凸も逆に彫らなければなりません。相当の時間と集中力を必要とします。これこそ職人技と言うのでしょう。抜き型には茶の湯の干菓子などを造るような一枚型と、間に餡がはいるような厚みのある二枚型、その他の特殊な変わり型があります。菓子職人が干菓子を打つのを「鳴る」と言うことから、和菓子の職人は抜き型を「鳴り板」や「打ち板」と呼んでいます。現在、抜き型を使って作られる和菓子は、練り切り、焼き菓子、落雁と、多種多様に使われています。しかし江戸時代のころまでは、抜き型を使って作る和菓子は落雁が殆どでした。落雁は穀物の粉に水飴、砂糖などを入れて、抜き型に詰めて打ち出したものです。

抜き型を使った代表的和菓子「落雁」

打ちものと言われる和菓子の中で、代表的なのが「落雁」です。特に茶道の干菓子として定番になっています。シンプルな和菓子だけに、形や色が重要になります。日本三名菓といわれている和菓子も落雁です。石川県金沢の『森八』の「長生殿(ちょうせいでん)」がその1つです。『森八』は390余年続く老舗の和菓子店になります。古くは宮内庁の御用として勤めてきました。藩主前田利常氏の創意と、小掘遠州の筆をかたどった「長生殿」の落雁が誕生しました。北陸のもち米と和三盆を混ぜて木型で打った、口どけの良い落雁です。そして新潟県長岡市の『越乃雪本舗大和屋』の『越乃雪(こしのゆき)』。安永7年に9代長岡藩主、牧野忠精公が病気の際に、献上したのが「越乃雪」でした。「越乃雪」を命名されたのも牧野忠精公です。「越乃雪」は越後産のもち米粉と、四国産の和三盆を使用しています。特徴的なのは、通常乾燥した和三盆を使用しますが、「越乃雪」は生の和三盆を使っています。独自の製法で造られた「越乃雪」は、ホロホロと崩れる雪解けのような和菓子です。最後に、島根県松江市の『風流堂』の「山川(やまかわ)」です。『風流堂』は明治23年創業の老舗和菓子店です。「散るは浮き、散らぬは沈む紅葉(もみじば)の、影は高尾の山川の水」という歌が菓子名の由来です。赤と白の対になっており、赤が紅葉の山を表し、白が川を表しているそうです。後味の良いスッキリとした口どけが特徴です