生のブドウと和菓子に、どんな関係があるのかと思いましたが、実は、生のブドウを使った和菓子はたくさんあるのです。
和菓子の世界は、江戸時代に完成を見た上生菓子に見られるように、抽象的なデザインの世界です。
ところが、近年では、くだものという具象的なものをいかしたトレンドが出てきているのですね。
たしかに、期間限定ではありますが、シャトレーゼの86円のブドウ餅からひとつ何百円もする、超高級品まで。
生のぶどうを使った和菓子は、思いがけず、たくさんあったのです。
今回は、そんな生のブドウを使った和菓子をご紹介いたしましょう。
そして、和菓子の世界の、新しいトレンドを、御一緒に考えてまいりましょう。

庶民派のブドウの和菓子

シャトレーゼのぶどう餅
ぶどう餅は、白あんの求肥の大福のしんに、ピオーネを一粒入れたもの。
7月から8月の季節限定のお菓子です。
甘い白あんと、酸っぱいブドウのコラボレーションが楽しめます。
2018年度の正確な値段はわかりませんが、2016年には、1個が86円で売られていました。

ヤマザキのぶどう大福
こちらも、白あんの大福の中に、ピオーネが一粒入ったもの。
甘酸っぱさが魅力です。

このように、いちご大福のバリエーションとして、手頃なお値段の大衆的な和菓子にも、生のブドウを使ったものが登場しています。

芸術的なブドウの和菓子

賓菓源吉兆庵 宝掌珠

5月から夏にかけてのお菓子です。
マスカットオブアレキサンドリアのひと粒を求肥で包み、グラニュー糖をかけたもの。
ひとつ、270円です(価格は変わります)。
作りたてと、数日たってからのものとは、味わいが違うとのこと。
また、5月は酸味が勝っていますが、夏も深まるにつれて、ぶどうに甘さがのってくるので、毎月買って楽しむ人もいるそうです。

共楽堂(広島)
ひとつぶのマスカット

広島市の共楽堂では、40年も前から、生ぶどうのマスカットをつかった求肥のお菓子を作っています。
マスカットを求肥で包み、グラニュー糖をまぶしたものです。
40年以上の歴史というと、こちらが元祖のように思われます。
2018年は、ひとつ300円でした。

ひとつぶのピオーネ
真夏には、ピオーネで作ったものもあります。

ひとつぶの紫苑
秋から冬にかけては、紫苑というぶどうを使ったバージョンが発売されています。
紫苑は岡山県で生産されている、冬ぶどう。
収穫期は、10月~12月です。
ワインレッドのブドウが、求肥から色が透けて見えるのは、とてもきれいです。
マスカットが夏のものであるならば、ワインレッドの紫苑は、秋の深まる季節にふさわしい感じがします。
値段はマスカットと同じ、300円でした(変動する可能性があります)。

共栄堂では、ひとつぶのさくらんぼという和菓子も出しています。

京都養老軒
ゆめぶどう大福

パリッとした、さわやかな食感のぶどう大福とのこと。

こちらは、さまざまなフルーツ大福があります。
他には、ココナッツミルク大福、マンゴークリーム大福、いちごあんクリームチーズ大福などもあるそうです。
しば漬け大福という、衝撃的なものもあるとのこと。

宗家 源吉兆庵
陸乃宝珠

やはり、マスカットオブアレキサンドリアを求肥で包んで、グラニュー糖をふった和菓子です。
こちらの吉兆庵でも、季節ごとのフルーツを使った和菓子があります。
しかし、生のフルーツとは限らないところが、他とは違うのでしょうか。
秋のお菓子を紹介しておきます。

粋甘粛
大きな市田の干し柿をまるまる1個つかい、白あんをつめたもの。

御前栗
ひとつぶの蜜漬けの栗を、栗餡と求肥で包み、栗そぼろをまぶしたもの。

甲州屋本店
月の雫

生の甲州ぶどうを砂糖蜜で包み込んだお菓子です。
2018年は、9月19日から12月28日まで予約で注文を取っています。
砂糖の蜜をパリッと噛むと、なかから生のぶどうの汁がじゅわーっと口いっぱいに広がるとのこと。

山梨県には、生のぶどうではないけれど、ぶどうジュースを砂糖蜜で包んだお菓子も昔はあったように思います。

和菓子における具象性・洋菓子の影響

さて、このように、生のぶどうを中心に、フルーツを生かした和菓子をご紹介してきました。
日本の菓子は、もともと、くだものであったというのが歴史です。
そういう意味で、和菓子は、歴史をさかのぼっているようにもみえます。
しかし、実は、現在のトレンドは、洋菓子からの影響が強いのではと思います。

和菓子では、フルーツ菓子のように、素材を生かすという考え方は少ないのです。
たとえば、同じこなしや練りきりの生地を年中、使っていますよね。
味や、舌触りには、変化が少ないのです。
しかし、見た目やデザイン性という点で、同じ素材とは思えないような、広い世界を作り出しています。
和菓子は、洋菓子のようには、素材を使いません。
けれども、それは、素材を生かさないという意味では、決してありません。
通年で、決まった素材を使って、それでも季節感を出すのが、たとえば、上生菓子の世界です。
おなじ、練りきりやこなし、またはきんとんを使います。
それでも、色を変えて、春の菜の花と秋の紅葉を作り分けるのが、和菓子でした。
いわば、抽象の極みともいえる、デザイン性で、季節感をあらわすのです。
それに対して、洋菓子では、具体的に果物や花をつかったりして、季節感をあらわします。
つまり、洋菓子のデコレーションケーキやショートケーキでは、フルーツという素材そのもの、すなわち、具象的なものをそのままに使うのです。

今回取り上げた、ぶどうの和菓子は、ぶどうという、具体的な素材をそのままに使っています。
これは、上記のような洋菓子の具象性という特徴を取り入れた新しいトレンドの和菓子なのですね。