宇治拾遺物語に「稚児のそら寝」という説話があります。

今は昔、比叡山延暦寺の僧侶たちが、深夜の暇潰しに皆でぼたもちを作ることになりました。一人の稚児が寝たふりをしながらその様子を窺っていましたが、完成したぼたもちを大人たちが食べ始めると、どうにも我慢ができずに起きてしまうというお話です。

このようにおはぎ(ぼたもち)は古くから人々に親しまれ、日本人なら誰でも一度は口にしたことがある和菓子です。

餅米で炊いたごはんを餡で包んだ素朴な味わいは、単純でありながら奥が深く、頬張る人を懐かしい気持ちにしてくれます。

そんなおはぎとぼたもちの魅力を探ります。

おはぎとぼたもちの違いと風習

一般的におはぎとぼたもちは同じものですが、秋のお彼岸の萩の季節に作るのがおはぎ、春のお彼岸の牡丹の季節に作るのがぼたもちというように、食べる季節で呼び名が変わるとされています。

古来から小豆の赤は邪気を払うと言われており、お彼岸には小豆を使ったおはぎ(ぼたもち)を先祖にお供えして、邪気払いを願ったとされています。

また関東地方にはみつめのぼたもちと言って、家族に赤ちゃんが生まれた三日目にぼたもちを作り、お祝いとして近所に配るという習わしもあります。

おはぎ(ぼたもち)の作り方

餅米を炊き、小豆を煮て、人の掌で握るという単純な工程で作られるおはぎ(ぼたもち)は、手作りならではの温かさが感じられる和菓子であり、おやつにも最適です。

その作り方のコツをいくつか御紹介します。

①ごはん

中身となるごはんを餅米だけで炊くと、弾力のある美味しいおはぎになりますが、冷めると固くなるという難点があります。

そのため餅米にうるち米(普通の白米)を加え、2対1程度の割合にして炊くと、冷めても柔らかいおはぎになります。

また、おはぎが固くならないための工夫として、米を炊く時に小さく切った里芋をのせて炊く地方もあるようです。

これは米を節約するための先人の知恵でもありますが、里芋の粘り気で、滑らかで口当たりの良いおはぎになり、カロリーも低く抑えられます。

炊き上がったごはんはすりこぎで叩いて潰しますが、その際ごはんの粒感が残るよう全部潰しきらないことが大切です。

この状態を半殺しと言い(因みに皆殺しはお餅の状態です)、徳島県には半殺しという名のおはぎが名物になっている地域もあります。

②餡

ごはんを包む餡は粒餡と漉し餡があり、豆本来の食感を楽しみたい人は粒餡、滑らかな餡の舌触りを楽しみたい人は漉し餡というふうに、好みが分かれるところです。

また、新豆が出回る秋のおはぎは豆が柔らかいので粒餡で作り、豆が固くなる春のぼたもちは少し手間をかけて漉し餡で作るとの説もあります。

あとはごはんで丸や楕円の形のお握りを作り、薄くのばした餡で包んだら出来上がりです。

東日本では餡を小さく丸めたものをごはんで包み、きな粉や黒胡麻をまぶしたおはぎも定番ですが、西日本では青海苔をまぶしたものが「緑のおはぎ」と呼ばれて親しまれています。

和菓子店で購入する小ぶりで上品なお萩や牡丹餅も魅力的ですが、お彼岸の際や日々のおやつに、是非とも手作りならではの格別の味を堪能したいものです。