和菓子には、自然の移ろいや日々を大切にする日本人の心が感じられます。
お正月から春にかけての様々な行事にも欠かせない和菓子の数々を御紹介します。

元旦の鏡餅

お正月は、新しい一年の健康と幸せを願い「鏡餅」をお供えします。搗いた餅を丸く成形し、二段や三段に重ねて飾る鏡餅は、穀物の神様である「年神様」へのお供え物です。丸い形は神事に使われていた青銅製の「鏡」を模しています。「鏡餅」はお正月の床の間や神棚に飾りますが、正式には三方と呼ばれる台に、半紙と縁起物のウラジロの葉を敷いて鏡餅を置き、その上にやはり縁起物の昆布などを飾りつけ、一番上に橙をのせます。一般の家庭では半紙の上に餅を置き枝付きのミカンを乗せるだけでも様になります。鏡餅は縁起の良い日を選んで飾りますので、末広がりの「八」の付く日が望ましく、逆に読みが「苦」と同じ「九」の付く日は避けた方がよいでしょう。また、大晦日の三十一日も「一夜飾り」と呼ばれて縁起が悪いとされています。
お正月は新年の息災を願って大福茶を頂きます。新年に頂く和菓子もめでたい銘や意匠のものが好まれます。

鏡開きとお汁粉

一月十一日または十五日(地方によって異なります)は「鏡開き」です。鏡餅を開いてお汁粉を作り、年神様をお送りします。この際、お餅は包丁で切らず、木槌や手で開いて細かくしたものを、邪気を祓うとされる小豆を使ったお汁粉などの中に入れます。包丁などの刃物を使わない理由は、神様にお供えした鏡餅に刃物を入れるのは縁起が悪いからです。同様に「切る」「割る」も縁起が悪いため「開く」という言葉を使います。

節分の豆まき

二月四日ごろが立春で、その前日が「節分」です。「節分」とは季節が移り変わる時を意味し、立春・立夏・立秋・立冬の前日、特に立春の前日の事をさします。その夜を「年越し」といい、鰯の頭を柊の小枝に刺して戸口に差し、「鬼は外、福は内」と言いながら炒り豆を撒いて除災招福の行事を行う風習があります。炒り豆は一般的には大豆で、地方によっては落花生を撒くこともあります。古来より日本人は、米、麦、ひえ、あわ、大豆の五穀には穀霊と呼ばれる精霊が宿っていると考えられており、特に豆は「魔滅」と書き、魔を滅することができるとされてきました。大豆を炒る理由としては、生の豆を使うと拾い忘れた時に芽が出て縁起が悪いといわれるからです。「炒る」を「射る」とかけて縁起がいいとも考えられています。撒いた豆を年の数だけ食べるという習わしがありますが、邪気を払った豆を年の数だけ食べることにより、年と同じ数の福を身体に取り入れるという意味があるとされています。また、節分の行事として、開運招福を願い大福を配る寺社仏閣もあります。

和菓子で感じる春の気配

節分に豆撒きで邪気祓いをすませ、立春が訪れると、和菓子店には春の和菓子が並びます。彩り鮮やかな練り切りや、草餅や桜餅、梅の花が咲く頃に鳴き始める鶯の羽の色をイメージした鶯餅などをお茶請けに、一足早く春の足音を感じたいものです。

桃の節句と和菓子

三月三日は五節句のひとつである「雛祭り(桃の節句)」です。平安時代に姫君の遊びから広まったとされ、女の子の健やかな成長を願って、雛人形と一緒に菱餅や雛あられ、桃の花や白酒をお供えします。雛祭のお菓子といえば、京都では「引千切」が欠かせません。文字通り餅の先端が引きちぎられており、これは子だくさんを意味します。子どもの成育と幸福を願う思いが込められたお菓子で、蓬餅に粒餡、白のこなしにこし餡、紅のこなしに白餡の三種があります。形が真珠(阿古屋玉)に似ていることから「あこや餅」の別名があります。

春のお彼岸と牡丹餅

春のお彼岸には牡丹餅を作ってお供えします。古来より小豆の赤は邪気を祓うとされています。一説には、新豆が出回る秋のお萩は豆が柔らかいので粒餡で作り、豆が固くなる春の牡丹餅は少し手間をかけて漉し餡で作るとも言われています。

菜種時雨と黄身しぐれ

春分を迎える頃には菜の花が咲き、その頃に続く長雨を「菜種梅雨」と言います。この時季に作られる黄身しぐれは、菜の花の色と時雨の風景から生まれたもので、表面の亀裂は雨雲と雷を表しています。